パートナーがうつ病に。私にできるサポートは?日常のかかわり方や相談先
「パートナーがうつ病の診断を受けたらしい。どんなふうに声をかけたらいいんだろう」
「最近、ずっと元気がなくて心配。一緒に病院に行った方がいいのかな」
この記事は、
- 大切なパートナーがうつ病になった
- パートナーの様子がおかしい、うつ病かもしれないと心配している
そんな方のお悩みや疑問に応えるために作成しました。
うつ病のパートナーをどのようにサポートをすべきか分からない、パートナーを心配する余り自分自身が疲れ果ててしまうなど、支える側にも支える側の悩みがあります。
以下では、
- うつ病のパートナーを支える上での考え方
- パートナーのうつ症状に気づくための日常のサイン
- パートナーの回復をサポートするための、具体的なかかわり方
- 病院やカウンセリング等の支援サービス利用方法
- 日々のコミュニケーションのお悩みQ&A
をご紹介します。あなたとパートナーのご状況に合わせて、参考にしていただければ幸いです。
※この記事は東京都内で訪問型メンタルケアサービスを展開する「コモレビ」が執筆しています。
コモレビは、精神科看護師や精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフが、当事者の方のご自宅を訪問しておこなうメンタルケアサービスです。1回約40分。対話や相談を通して日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、一緒に解決を目指すことができます。
現在、東京都内の一部地域にてサービスを行っています。
1. 無理して抱え込まず、日常の中で自分に出来るサポートを
うつ病になった方にとって、身近で信頼できる存在であるパートナーは、治療・回復の過程でも良き理解者であり支え手となりえます。これを読んでくださっているあなたも、きっとパートナーを支えようと、自分に出来ることを探しておられることと思います。
だからこそはじめにお伝えしておきたいのは、パートナーや家族の方々も、「自分自身を大切にすること」を忘れないでいただきたいということです。
大切なパートナーがうつ病で苦しんでいるのを見て、「ここはなんとか自分が支えなきゃ…」「この人が一番つらいんだから、自分はがんばらなきゃ」と思われたこともあるでしょう。
しかし、もしあなたが頑張りすぎて限界を迎えてしまったら、パートナーと「共倒れ」になりかねません。あなた自身が健やかでいるからこそ、パートナーの回復を焦らずに見守り支えることができるのです。
うつ病のパートナーを支えるために大切なことは、自分自身に無理がなく、自分を犠牲にしない範囲でのサポートを心がけること。共倒れにならないよう、病院をはじめとする社会資源、第三者の力を有効活用することです。このことを前提に、以下、日常生活で出来るサポート方法をご紹介していきます。
2. うつ病の症状を理解し、パートナーが発する日常の「サイン」に気づく
うつ病は、強いストレスや長期的なストレスによって、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、いつもどおりの思考や生活ができなくなる精神疾患です。
ちょっとした疲れや気分の落ち込みは誰もが経験しますが、それが長く続いたり、いつも以上に深刻な様子の場合は、注意が必要です。
うつ病は「からだ」と「こころ」両方に症状があらわれます。
からだの症状と日常のサイン
からだの症状は、1)慢性的な疲労感・だるさ、2)食欲・性欲の減退や体重の低下、3)不眠や過眠などの睡眠障害が代表的です。
パートナーと一緒にいるときには、
「いつも完食していたはずの食事が食べきれていない」
「週末、デートを楽しみに早起きしていたのに、最近は夕方まで寝ている」
といった形で症状が見えることがあります。
こころの症状と日常のサイン
こころの症状は、1)憂うつ・落ち込み・イライラといった抑うつ気分が続く、2)意欲が低下し、趣味や家事がおっくうになる、3)集中力や判断力が低下し、行動が難しくなる(その結果、自己評価が下がり、自分を責めがちになる)などがあります。
パートナーとのやり取りの中では
「以前と比べて、笑うことが少なくなった」
「熱心に打ち込んでいた趣味や習い事をやらなくなった」
「仕事のやりがいや楽しさをよく話してくれていたのに、最近は自分を責める発言ばかりになった。会社に行きたくないと言うこともある」
といった変化が見られるかもしれません。
悪化時は自殺リスクも。危険サインを見逃さないで
うつ病が悪化すると、自殺を考え行動に起こす危険があります。
- 「自分はダメな人間だ」「消えてなくなりたい」といった自責感・絶望感が強い発言が増える
- 家出などの突発的な行動や、飲酒量の著しい高まりなどが見られる
- 具体的な自殺の方法を調べたり考え始める
こうしたサインが出ている場合は、大切なパートナーを守るためにも、すぐに病院や保健所に相談してください。
パートナーの方は、職場の同僚や友人に比べて一緒にいる時間が長く、本人の元々の性格や習慣をよく知っていることが多いため、比較的うつ病の症状に気が付きやすい立場にあります。
「なんだか普段と違うな」と感じたら、うつ病のサインが出ていないか、パートナーのからだとこころの変化を注意深く観察してみてください。
※症状には個人差があり、上記はあくまで一例です。
3. パートナーの回復をサポートするための、具体的なかかわり方
次に、うつ病のパートナーを支えるためのかかわり方をお伝えします。
①理解する
うつ病のパートナーを支えるうえで大切なことは、まずうつ病の症状について理解することです。
「うつ病になってから、前は無かったような行動が増えた」と感じたことはありませんか?
それは本人の性格が変わったわけではなく、うつ病の脳機能への影響による変化であることがほとんどです。
先ほど説明したようなうつ病の症状を理解することで、いつもと違うパートナーの振る舞いに、怒りを抱いたり混乱したりすることを避け、本人の苦しみに寄り添ったサポートをしやすくなります。
②傾聴する
「傾聴」とは、相手の気持ちや考えに関心・共感を抱きながら、評価や否定をすることなく、じっくり丁寧に話を聴くことです。
うつ病ゆえに、パートナーからネガティブな発言を聞くことも増え、つい「大丈夫だよ、元気だしなよ!」と励ましたり「仕事や嫌ならやめたらいいじゃない」と提案したりしそうになることもあると思います。
しかし、うつ病の人の場合は、そうした励ましや提案を聞くとますます追い詰められてしまったり、責められた気持ちになったりと、悪影響を及ぼしてしてしまうことが多いです。
「そっか、今そんな気持ちなんだね」「つらい中、話してくれてありがとう」など、まずはご本人の気持ちをそのまま受け止めること、そして受け止めたことを相手に言葉で伝えることを意識してみてください。
③支援につながる
うつ病は、本人の意識やがんばりだけではどうにもならない、治療や支援が必要な精神疾患です。パートナーであるあなたの存在は、回復に向けて大きな支えとなりますが、決して二人で抱え込まず、医療機関をはじめとする社会資源につながることが大切です。
ご本人の回復だけでなく、パートナーであるあなたの健康を守る上でも、積極的に第三者の助けを借りてください。次の章で具体的にその方法をご紹介します。
4. うつ病患者・パートナーが利用できるサポート
うつ病であるご本人の苦痛を少しでも取り除くこと、また支え手であるパートナーの苦痛を減らすことは、どちらもうつ病の回復に直接影響します。
ここでは、ご本人もしくはパートナーが利用できる相談先を紹介します。
精神科・メンタルクリニック
外来にて医師からの診療を受けること、お薬を出してもらうことが可能です。ご自宅から通いやすい場所にあるか、評判はどうかなどを調べた上でかかるクリニックを選ぶことをお勧めします。
これまでご紹介したような症状がパートナーに見られ、かつパートナーがまだ受診をしていない場合は、「普段と様子がちがって心配だから、一度病院で診てもらわない?」など、傾聴・共感を意識しながら通院を勧めてみてください。ご本人の同意・リクエストがあれば、予定を合わせて一緒に通院するのも一つの手です。
すでに受診し、うつ病の診断を受けている場合は、医師の処方やアドバイスを踏まえて、可能な範囲で治療をサポートしてあげてください。
同棲・同居などで日常生活を共にする時間が多い方の場合は、
- 服薬:お薬を決められた量・タイミングで飲めるように声かけする、お薬ケースを用意するなど
- 睡眠:寝室に一緒に行く、電気を消してあげるなど
- 食事:なるべく栄養バランスを意識したメニュー、二人で一緒に食べるなど
- 軽い運動:一緒に近所を散歩をするなど
など、日常生活の色々な場面でサポートが可能です。
ただし、あくまでご本人もパートナーも「無理をしない」こと、医師に相談しながら治療・回復の段階に応じて段階的に、がポイントです。パートナーとしてどんなことができるか、定期通院の際に同行して、医師に相談してみるのも良いでしょう。
精神保健福祉センター
こころの悩み、精神疾患や障害に関するさまざまな相談ができます。
「うつ病のご本人が病院を受診していない場合」「治療を拒否している場合」「とにかくどうしたらいいのか分からない場合」なども相談することができます。
全国精神保健福祉センター長会 からお近くの精神保健センターをお探し下さい。東京都内であれば、地域に応じて以下の3つの精神保健福祉センターが、それぞれ『こころの電話相談』を受け付けています。
都内の精神保健福祉センター | こころの電話相談 |
---|---|
精神保健福祉センター(下谷) | 03-3844-2212 |
中部総合精神保健福祉センター | 03-5155-5028 |
多摩総合精神保健福祉センター | 042-371-5560 |
カウンセリング等のメンタルケアサービス
臨床心理学の専門性を持つカウンセラーが相談者と話し、抱えている悩みや問題点を整理し、一緒に解決できるよう関わっていきます。カウンセリングは精神科や心療内科のクリニックに併設されている場合や、臨床心理士が開業しているカウンセリングルーム、オンラインのカウンセラーマッチングサービスなどがございます。
パートナー・家族向けコミュニティ
うつ病の人の家族やパートナーがつながり、体験を共有する家族会やコミュニティサイトがあります。ほかのご家族やパートナーの経験を聞きたい、悩みを共有したいという方は、以下のようなサイトやサービスを利用してみてください。
みんなねっとサロン(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が運営)
うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「encourage」(株式会社ベータトリップが運営)
勤務先の産業医、産業保健師、産業カウンセラーなど
企業等に所属している方は、業務調整や休職・復職について、勤務先の産業医、産業保健師、産業カウンセラーに相談しながら検討を進めましょう。その際、医師に診断書を出してもらって提出する、医師やカウンセラーに受けたアドバイスや治療方針を伝えるなどすると、会社側も適切なサポートが取りやすくなります。
知人・友人の力を借りる
上記のような支援機関・相談窓口だけでなく、身近な知人・友人の力を借りることも一つの方法です。同じくうつ病やそのサポート経験がある人に相談したり、電話やカフェなどでゆっくり話を聞いてもらったり、本人もパートナーもいっぱいいっぱいの時に買い出しなどを助けてもらったり……二人だけで抱え込まず、「助けてほしい」と声をあげてみてください。あなたとパートナーを支えたいと思っている人が、きっと味方になってくれます。
5. こんなときどう答える?シチュエーション別Q&A
最後に、パートナーに対するサポートの方法や声掛けの方法についてQ&A方式で解説していきます。
Q.どうしても前向きなアドバイスをしてしまい、うつのパートナーが怒ってしまう
A.建設的なアドバイスをしたくなるあなたの気持ちは、元気なこころの状態では当たり前のことかもしれません。また、パートナーも普段なら反発することなく受け止められる内容だったかもしれません。
ですが、心が疲れている状態のパートナーは、そのアドバイスが非現実的に思えたり、「自分の苦しさが分かってもらえない」と孤立感を抱いたりすることがあります。
まずはこころの状態を回復する過程にじっくり寄り添い、具体的なアドバイスは、ある程度回復が見られてからにしましょう。
Q.会社には行けないのに、遊んでいるのを見ているとついイライラしてしまう
A.あなた自身も日々働いていて、週末を楽しみに頑張っているのであれば、そのような感情を感じてしまうことも無理もないことでしょう。
一方、うつ病であるご本人としては、「仕事や家事をやるエネルギーはとても残っていないが、ボーッとテレビやネットを見たりすることはかろうじて出来る」という状態であることや、「働くのはまだ難しいけど、好きなことで遊ぶエネルギーは戻ってきた」という程度の回復度合いであることは珍しくありません。
症状が重いときは、「遊ぶことにも罪悪感を感じてしまう」ということもありますから、「遊びだけでもできるようになったんだ」というように、前向きな変化として捉えられるといいでしょう。
Q.突然別れを切り出された。どうすればいいのか
A.うつ病の症状の一つに「衝動性」の高まりが挙げられます。何もかも嫌になってしまい、その絶望感の現れとして、ふと衝動的に「別れよう」と言ってしまうこともあります。
一般的に、心の状態が悪いときは大きな決断をしないほうがいいとされており、別れ話も同様です。「別れたいと思うくらい、気持ちが辛いことは理解した。だけど、大事な決断だからもう少し落ち着いてから、改めて話し合いをしよう」と提案するなど、ご本人の状態が落ち着くまで、少し時間を置いてみてください。
Q.仕事を辞めると言い出した。どうアドバイスしたらいいか
A.前の質問と同様、うつ病の症状としての「衝動性」の現れである可能性があります。まずは、仕事が辛いという気持ちに寄り添って話をじっくり聞いてみてください。
仕事が辛くて仕方がなくて、仕事がうつ病の大きな原因なのであれば、退職も一つの選択肢ですが、ひとまずは「休職」という制度を利用し、傷病手当金をもらいながら回復につとめ、復職や転職の判断はそれから、という方針でも良いと思います。ご本人の話を傾聴し、医師やカウンセラーの意見も参考にしながら、焦らずじっくり、一緒に選択肢を検討してみてください。
6. パートナーもご本人も、うつ病との付き合いは、無理せず焦らずじっくりと
大切なパートナーがうつ病になることで、日常が変化し、不安や戸惑いを抱かれている方も多いことと思います。
単なる疲れや落ち込みと違い、一日二日休んだだけでは心身は回復しないのがうつ病という精神疾患です。今まで出来ていたことができなくなるなど、ご本人もパートナーであるあなたも、もどかしい思いをする日々はどうしても一定期間続きます。ですが、うつ病は適切な治療や支援を受けることで、少しずつですが、着実に回復に向かうことができる病気でもあります。
この記事でご紹介した考え方や対応方法を参考に、また医師をはじめとする第三者のサポートを受けながら、無理せず、焦らず、じっくりとパートナーの回復を応援していただければ幸いです。
メンタルケアサービス
「コモレビ」とは
コモレビは自宅訪問型のメンタルケアサービスです。現在、都内かつ新宿駅および練馬駅から片道30分圏内にお住まいの方を対象としております。
メンタルヘルスを専門とするスタッフが、ご利用者様の自宅に直接うかがい、お話をさせていただきます。心身の調子が悪く外出がむずかしい場合でも安心してご利用いただけます。
1回約40分。精神科経験のある看護師や、精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフとの対話・相談を通して、日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、解決を目指すことができます。
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