うつ病を分かってもらえない。うつ病が分からない。精神科看護師ならこう考える
うつ病は周りから見ても症状が分かりづらく、周囲の人には「サボっている」「気合いが足りない」などと思われることも。そして身近な人ほど分かってもらえず、余計につらい思いをします。
周囲の理解を得るために、自分が頑張って説明しようとするのはあまり勧めません。負担も大きく回復のさまたげにすらなります。医療機関やプロの力を借りて説明してもらいましょう。
どんな声をかけてあげれば元気になれるのか、どう接していいのか。周囲の人は、何をしてあげればいいのか分からず、もどかしく思っていることでしょう。
結論から言うと、いきなり元気がでる声かけやアドバイスなんてありません。できることは、ただ寄り添うこと。また、本人がその思いを吐露したときアドバイスせず黙って話を聞くこと。それだけでも本人にとってはとてもありがたいものです。
※この記事は東京都内で訪問型メンタルケアサービスを展開する「コモレビ」が執筆しています。
コモレビは、精神科看護師や精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフが、当事者の方のご自宅を訪問しておこなうメンタルケアサービスです。1回約40分。対話や相談を通して日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、一緒に解決を目指すことができます。
現在、東京都内の一部地域にてサービスを行っています。
1. うつ病の苦しさは周囲からは分かりにくい
うつ病には、意欲低下、無気力、不安が強い、身体がだるい、食欲がでない、眠れない、仕事がなかなか進まないなどの症状があります。
周りの人たちからすると、よくボーっとしていたり、やたらと仕事のミスが増えたりといった変化が見られるものの、それだけではあまり重症には思えないかもしれません。
本人もうつ病であることを打ち明けにくいと感じていたり、まだ自分がうつ病であると自覚していなかったりすることもあります。
ゆえに周囲の人から「ただ怠けている」「気合が足りない」などの精神論を押し付けられ、余計に苦しい思いをすることも。
ネットで検索をかけると「うつ病 わかってもらえない」というワードが出ることからも、同じ思いをしている人はたくさんいるのかもしれません。
身近な人ほど、分かってもらえない理由
うつ病を周りの人に分かってもらえない理由は2つ。周囲の人たちに「うつ病の知識がない」場合が多いこと、そして「どう接していいか分からない」と思われていること、です。
しかし同時に、「何とかしてあげたい」と思ってくれている人も多くいます。目の前の苦しそうなあなたを見て無力感やもどかしさを感じ、なんとか元気になってもらいたいと強く願い、叱咤激励してしまうのです。ただ、その行動や言葉がうつ病の人を苦しめてしまいます。
そんな相手の立場や関係性も、うつ病を分かってもらえない理由につながってくるのです。
家族の場合
身近でありながら意外と分かってもらえないのが家族。親であるゆえに「あなたはうつになるような心の弱い人ではない」「私の育て方が悪かったのでは」と考えてしまったり、家族がうつ病だということを周りに知られたくないと思ってしまったりする人もいます。現代のように、うつ病などの精神疾患が広く認知されていない時代を生きてきたこともあり、うつ病に関する知識がなかったり、どう接していいのか分からない、どう捉えていいのか分からない人が多いのも特徴です。
友人、同僚、パートナーの場合
若い世代だと、比較的うつ病に対する知識はあるかもしれません。それでも実際にうつ病の人を目の前にすると、頭では分かっていても実際どう接していいのか困ると思います。
加えてうつ病のことを多少は知っているがゆえに「自殺したらどうしよう!?」という焦りや不安を強く抱いてしまうこともあります。
何か声をかけなきゃと慌てるあまり、失恋や仕事で失敗した人を励ますようなやり方をしてしまったという方もおられるかもしれません。これもまた家族と同じで、それ以外の適切な方法が分からないためなのです。
2. どうすれば分かってもらえるのか
自分で説明して分かってもらおうとするのは諦める
他人の思考を変えることは困難です。また、分かってもらおうと努力すること自体が負担になり、回復の妨げにすらなります。申し訳ない気持ち、分かってもらえないつらさもあると思いますが、状態が良くない時は、理解してもらうことはあきらめて距離をとった方がいいかもしれません。
専門家から説明してもらう
とはいえ、家族と同居していると距離をとるのは難しいでしょう。また回復には周囲の理解や協力も必要です。そんな家族にうつ病を理解してもらうなら、受診に同行してもらうのもひとつ。
医療職というプロから説明してもらうことで、理解してもらうことが期待できるかもしれません。実際に医師から家族に説明してもらったことで、分かってもらうまでに至らないものの、態度は軟化していったケースもあります。
また、医師だけでなく看護師や精神保健福祉士、心理職が在籍している医療機関もあります。通院しているところに相談してみましょう。
3. 周りの人はどう接したらいいか
本人の気持ちに寄り添うようなコミュニケーションを
フラれた直後に「もっと良い人いるよ」「あんな人、さっさと忘れなよ」と言われても、「それができたら、とっくにやってるよ!」と思ったことはないでしょうか?また、痩せたいと言って「運動すれば」「食事減らしたら」などのアドバイスをされたときも、同様に感じると思います。
的確すぎるアドバイスは、落ち込んでいる方には「気持ちに寄り添ってもらえていない」「分かってもらえない」という感覚を与えやすく、ときには、ただ傷つく結果になることも。「フラれて辛いよね」「痩せたくてもなかなか行動できないこともあるよね」と共感してもらうだけの方が、気持ちが楽になるということも少なくありません。
いきなり元気になれることはない、と理解する
基本的に、励ましやアドバイスだけで、うつ病になった人がいきなり元気になることはありません。どんなに適切な接し方や治療をしても、うつ病の回復には半年から年単位と長期間に及ぶものです。では、具体的にどのようにすればいいのでしょうか。
精神科の現場ではこうしている
精神科の現場では励ましやアドバイスをすることはほぼありません。回復局面にあるときには励ましやアドバイスが有効なときもありますが、そのタイミングを見極めるのは難しいものです。
実際に現場ではどのように接しているかというと、まず本人の思いに耳を傾けます。といっても、無理矢理話してもらうようなことはしません。
心配している、何か力になれることがあればいつでも言ってほしい、何があっても私はあなたの味方、という姿勢を伝え続けるのです。それだけでも本人にとっては非常にありがたいもの。
そして本人が思いを吐露したときは、とにかく聞くことに専念してください。話を聞いていて、もどかしく思うこともあるかもしれませんが黙って耳を傾けましょう。
また本人から「うつかもしれない」と連絡が来たときは受診を勧めてあげてください。
なぜなら本人も「こんな状態でうつ病といえるのか、受診していいのか」という迷いがあるからです。
その時は迷わず背中を押して受診を促してあげましょう。
4. 相談先
当事者会・家族会
うつ病の人達が集まって語り合う当事者会、うつ病の家族を抱える家族会、というものがあります。似たような経験をしている人同士が集まって、お互いの経験を語り、共有することでうつ病の苦しさを分かってもらえる場にもなります。
信頼できる友人や、第三者的な立場の人に話してみる
無理に周りの人に理解してもらおうとすることは諦めましょう、と上に書きましたが、あなたが信頼できる相手を選んで、気持ちを打ち明ける、頼るということも一つの手です。
聞き上手な人、または自分の気持ちをまっすぐ受け止めてくれると思える人は周りにいないでしょうか?「自分のうつのことを話すだなんて、相手に迷惑をかけてしまうのでは」。こう言って遠慮される方が多いのですが、実は周りの人もあなたを心配していて、声かけを遠慮していることも多いのです。
あなたが気持ちを打ち明けることで、お互いに安心して話をできるようになることも。また、人に話すことで自分を客観視できることもあります。友人に限らず、社内の産業保健のスタッフなど、身近な第三者に話してみるのもひとつです。
5. 積極的に人の力を借りましょう
うつ病は周りには分かりづらく、そして理解も得られにくい病気です。また、周りの人もうつ病の人と接する機会が多くないので、適切に対応できないのは仕方ありません。
回復に集中するためにも、まずはプロである医療者の力を借りるのが早いでしょう。うつ病になる人も周りの人も、自分ひとりで頑張ってしまいがちです。一生懸命だからこそ、誰かを頼ったり他者の力を借りることが苦手なのかもしれません。受診や相談も、誰かの力を借りる練習の一環だと思って医療機関を訪ねてみてください。
——————————————
ライタープロフィール
新屋雅之
看護師
精神科病院に9年勤めたのち、精神科訪問看護で3年従事。現在はいくつかの訪問看護の業務委託、大学非常勤として働いている。
——————————————
メンタルケアサービス
「コモレビ」とは
コモレビは自宅訪問型のメンタルケアサービスです。現在、都内かつ新宿駅および練馬駅から片道30分圏内にお住まいの方を対象としております。
メンタルヘルスを専門とするスタッフが、ご利用者様の自宅に直接うかがい、お話をさせていただきます。心身の調子が悪く外出がむずかしい場合でも安心してご利用いただけます。
1回約40分。精神科経験のある看護師や、精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフとの対話・相談を通して、日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、解決を目指すことができます。
サービスのご利用にあたって、まずは無料の利用面談を承っております。利用面談では、お悩みやお困りごとなどをお聞かせ頂く中で、どのような形でコモレビがお力になれるか一緒に考えていきます。
また料金体系、利用可能な地域、医療保険や各種制度の適用、その他サービスに関するご不明点や気になることがあれば、以下よりお気軽にお問い合わせください。
Webでのお申し込み
利用面談・お問い合わせ