妻・夫がうつ病に。お互い安心して過ごすために、自分にできることは?
「妻がうつ病を患ってしまった。接し方が分からず、自分も辛くなってきた」
「夫がうつ病になって家庭内の困りごとが増えてしまい、育児に影響しないか心配」
うつ病の妻/夫を持つパートナーは、さまざまな悩みを抱えています。
一方でうつ病になった本人も「体調が良くならず、感情のコントロールが難しい。でもどうにか、夫婦関係を良好に保ちたい」など、複雑な思いを抱えていることが少なくありません。
この記事では、うつ病を持つパートナーを支えるうえで大切なポイントや、お互いが安心して過ごせるために大切なことについて説明をしていきます。
記事の最後には、使える相談窓口や支援制度についても紹介しておりますので、こちらも参考にしてください。
※この記事は東京都内で訪問型メンタルケアサービスを展開する「コモレビ」が執筆しています。
コモレビは、精神科看護師や精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフが、当事者の方のご自宅を訪問しておこなうメンタルケアサービスです。1回約40分。対話や相談を通して日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、一緒に解決を目指すことができます。
現在、東京都内の一部地域にてサービスを行っています。
1. うつ病の主な症状と基本的な接し方を知る
うつ病のからだの症状としては、1)慢性的な疲労感・だるさ、2)食欲・性欲の減退や体重の低下、3)不眠や過眠などの睡眠障害が代表的です。
また、こころの症状には、1)憂うつ・落ち込み・イライラといった抑うつ気分が続く、2)意欲が低下し、趣味や家事がおっくうになる、3)集中力や判断力が低下し、行動が難しくなる(その結果、自己評価が下がり、自分を責めがちになる)などがあります。
一緒にいるときには、
「前は好きなものならおかわりして食べていたのに、最近は一人前の量が食べられていない」
「前はバラエティ番組を見て笑っていたのに、最近はテレビを見ていても無表情のことが増えた」
「週末は、子どもとの外出のために張り切っていることが多かったのに、最近は休日もぼーっと動かないことが増えた」
といった形で症状が見られることがあります。
うつ病になったパートナーへの接し方については後ほど具体的に説明をしますが、1)傾聴する、2)理解するが基本となります。
本人は、うつ病の症状により、非常にネガティブになっていることや、疲労していることが多いです。
「どうしてこれができないの?」や「もっと頑張って!」などの声かけは、本人をより苦しませてしまいます。
今感じている気持ちをそのまま受け取ることが理想的な接し方です。
ここからは、実際に「夫婦」という間柄で気を付けるべきことについて説明をしていきます。
2. お互いのペースを尊重し、無理をしないで暮らせる方法を考える
パートナーと一緒に暮らしていると、うつ病によるものだと頭ではわかっていても、家事がなかなか進まないことに苛立ったり、「自分はこんなに頑張っているのに」「うつ病になる前はちゃんとできていたのに」とイライラしてしまったりすることもあると思います。
同じ家に住んでいて、他人よりずっと近い距離で長い時間生活しているからこそ、不満が出やすかったり、強く当たってしまったりすることもあるでしょう。
ですが、これらの「もっとできるのでは」という期待はうつ病の本人にとって心の負担となります。
まずは、お互いに対する「こうあってほしい」「これをしてほしい」という思いを手放すことで、双方の負担が減ります。
例えば家事であれば、毎日やると決めていたトイレ掃除を週1回にすると決めたり、週の半分は自炊をお休みすると決めたりすることで2人とも負担が減り、心に余裕ができるでしょう。
3. 共倒れを防ぐために、自分だけで抱え込まない
共倒れは、支える側が自分の限界を超えて支えようとしたときに起こります。
人間誰しも、ひとりで支えられることには限界があります。
また夫婦の場合、支える側も専門職ではなく、症状を直接治すことはできないので、そのもどかしさから余計苦しく感じてしまうことがあります。
夫婦という身近な間柄であったとしても、支える側が無理をして体調を崩してしまうと、お互いにとても苦しくなってしまいます。
身近な存在だからと言って、自分が無理をしてまで助けなければと思いつめる必要がありません。
後ほど詳しく解説しますが、適切に外部の相談先を頼ることが、共倒れ防止のためには重要です。
4. お互いの休める場所をつくる
「夫婦で支え合わなきゃ」という意識が強いと、自然と一緒にいる時間が長くなり、「気づけば何か月もパートナーと仕事の同僚以外の人と話していない」という生活になる場合もあります。
そういった状況だと、息抜きをしたり、気持ちを吐き出したりする機会が少なくなってしまい、自然とストレスが増えてしまっていることがあります。
そんなときは、あえて「ひとりの時間をつくる」ことが大切です。
休む時間ができたり、2人の関係性を冷静になって考えたりするきっかけになります。
・時々カフェに行き、ひとりでボーっとする時間をつくる
・美容室に行ってのんびりリラックスする
など、パートナーがうつ病になってから、意外とできていなかったというような小さなことをやってみるだけでも、ストレスの発散になります。
また、友人や家族など第三者に話を聞いてもらうことで、2人では思いつかなかった解決策が生まれることもあります。
2人で今後のことを考えていても議論が止まってしまい、苦しいと感じている人は第三者の視点を参考にするのも一つの選択肢です。
5. 外部の支援機関を活用する
①精神科・心療内科
外来にて医師からの診療を受けること、お薬を出してもらうことが可能です。
ご自宅から通いやすい場所にあるか、評判はどうかなどを調べた上でかかるクリニックを選ぶことをお勧めします。
これまでご紹介したような症状がパートナーに見られ、かつパートナーがまだ受診をしていない場合は、「普段と様子がちがって心配だから、一度病院で診てもらわない?」など、傾聴・共感を意識しながら通院を勧めてみてください。
ご本人の同意・リクエストがあれば、予定を合わせて一緒に通院するのも一つの手です。
すでに受診し、うつ病の診断を受けている場合は、医師の処方やアドバイスを踏まえて、可能な範囲で治療をサポートしてあげてください。
同棲・同居などで日常生活を共にする時間が多い方の場合は、
服薬:お薬を決められた量・タイミングで飲めるように声かけする、お薬ケースを用意するなど
睡眠:寝室に一緒に行く、電気を消してあげるなど
食事:なるべく栄養バランスを意識したメニュー、二人で一緒に食べるなど
軽い運動:一緒に近所を散歩をするなど
など、日常生活の色々な場面でサポートが可能です。
ただし、あくまでご本人もパートナーも「無理をしない」こと、医師に相談しながら治療・回復の状況に応じて段階的に、がポイントです。
パートナーとしてどんなことができるか、定期通院の際に同行して、医師に相談してみるのも良いでしょう。
②家族カウンセリング
症状はもちろんのことながら、うつの症状の影響で2人の関係が崩れていくことに不安を感じている人もいるでしょう。
身近な信頼できる相手を傷つけずに、2人が良好な関係を築くためには、家族療法というアプローチが有効なことがあります。
カウンセリングなどはひとりで行うイメージがあるかもしれませんが、2人で参加できるところもあります。近隣のカウンセリングルームやクリニックで、2人一緒にカウンセリングを受けられるところがないか探してみてください。
③パートナー・家族向けコミュニティ
うつ病の人の家族やパートナーがつながり、体験を共有する家族会やコミュニティサイトがあります。
ほかのご家族やパートナーの経験を聞きたい、悩みを共有したいという方は、以下のようなサイトやサービスを利用してみてください。
- みんなねっとサロン(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が運営)
- うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「encourage」(株式会社ベータトリップが運営)
- 勤務先の産業医、産業保健師、産業カウンセラーなど
企業等に所属している方は、業務調整や休職・復職について、勤務先の産業医、産業保健師、産業カウンセラーに相談しながら検討を進めましょう。
その際、医師に診断書を出してもらって提出する、医師やカウンセラーに受けたアドバイスや治療方針を伝えるなどすると、会社側も適切なサポートが取りやすくなります。
6. お互い無理をせずに、じっくり時間をかけて回復を待つ
大切なパートナーがうつ病になることで、日常が変化し、不安や戸惑いを抱かれている方も多いことと思います。
単なる疲れや落ち込みと違い、一日二日休んだだけでは心身は回復しないのがうつ病という精神疾患です。
今まで出来ていたことができなくなるなど、ご本人もパートナーであるあなたも、もどかしい思いをする日々はどうしても一定期間続きます。
ですが、うつ病は適切な治療や支援を受けることで、少しずつですが、着実に回復に向かうことができる病気でもあります。
この記事でご紹介した考え方や対応方法を参考に、また医師をはじめとする第三者のサポートを受けながら、無理せず、焦らず、じっくりとパートナーの回復を応援していただければ幸いです。
メンタルケアサービス
「コモレビ」とは
コモレビは自宅訪問型のメンタルケアサービスです。現在、都内かつ新宿駅および練馬駅から片道30分圏内にお住まいの方を対象としております。
メンタルヘルスを専門とするスタッフが、ご利用者様の自宅に直接うかがい、お話をさせていただきます。心身の調子が悪く外出がむずかしい場合でも安心してご利用いただけます。
1回約40分。精神科経験のある看護師や、精神保健福祉士などの国家資格を持つスタッフとの対話・相談を通して、日々のさまざまな悩みや不安に向き合い、解決を目指すことができます。
サービスのご利用にあたって、まずは無料の利用面談を承っております。利用面談では、お悩みやお困りごとなどをお聞かせ頂く中で、どのような形でコモレビがお力になれるか一緒に考えていきます。
また料金体系、利用可能な地域、医療保険や各種制度の適用、その他サービスに関するご不明点や気になることがあれば、以下よりお気軽にお問い合わせください。
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